人気の少年漫画は結局「血統持ち」が多いのか?ルフィ・ナルト・一護・炭治郎・デクを比較


少年漫画について語られるとき、たびたび出てくるのがこの話です。

「結局、主人公って血統がすごいやつばかりじゃない?」

最初は普通の少年に見えていた主人公が、物語が進むにつれて次のように判明する。

  • 父親が世界的な大物だった
  • 母親が特殊な一族だった
  • 伝説的人物の血を引いていた
  • 特殊な種族の血が混ざっていた

確かに、長期連載の人気バトル漫画にはこのパターンがかなりあります。

では実際、人気の少年漫画は「血統持ち」の主人公ばかりなのでしょうか。いくつかの有名作品を比較しながら考えてみます。

人気少年漫画の主人公を血統で分類してみる

まず、代表的なバトル漫画の主人公をざっくり並べてみます。

作品 主人公 血統の特殊性 強さへの直結度 タイプ
ONE PIECE モンキー・D・ルフィ 高い 中程度 強者の子孫型
NARUTO うずまきナルト 非常に高い 高い 能力遺伝・転生型
BLEACH 黒崎一護 非常に高い 非常に高い 複合血統型
HUNTER×HUNTER ゴン 高い 中程度 強者の子供型
呪術廻戦 虎杖悠仁 非常に特殊 高い 特殊出生型
ジョジョの奇妙な冒険 ジョジョ一族 非常に高い 作品による 血統そのものが主題
鬼滅の刃 竈門炭治郎 低い 低い 技術継承型
僕のヒーローアカデミア 緑谷出久 低い ほぼなし 後継者型
ブラッククローバー アスタ 低い 低い 非エリート型
るろうに剣心 緋村剣心 低い なし 修行・技術型

こうして見ると、確かに上位の人気バトル漫画には「親や祖先が普通ではない主人公」がかなり多くいます。

しかし、重要なのは次の点です。

血統がすごいことと、血統によって強いことは別。

ここを分けて見ていくと、同じ「血統持ち」でも中身がかなり違うことが分かります。

ルフィは超大物一家だが、能力を直接相続したわけではない

『ONE PIECE』のルフィは、かなり分かりやすい「すごい家系」の主人公です。

ルフィ(ONE PIECE)

祖父は海軍の英雄ガープ。父は革命軍総司令官ドラゴン。本人は海賊王を目指しています。

家族だけ並べれば、世界政府・革命軍・海賊という世界の巨大勢力すべてに関係する一家になっています。

ただし、ルフィはガープからゴムの能力を受け継いだわけでも、ドラゴンから覇気を受け継いだわけでもありません。

悪魔の実は偶然食べたものですし、覇気も本人が経験と修行によって身につけています。

そのためルフィは「血統によって能力を得た主人公」というより、「世界的な強者の家系に生まれた主人公」に近いでしょう。

血筋はルフィの強さそのものというより、なぜこの主人公の家族が世界の中心人物ばかりなのかを説明する役割の方が大きくなっています。

ナルトは物語が進むほど血統設定が積み重なっていく

一方、『NARUTO』のナルトは、比較した中でも血統に関する設定が最も多く重なっている主人公です。

うずまきナルト(NARUTO)

父は四代目火影・波風ミナト。母はうずまき一族のクシナ。さらに物語終盤では、六道仙人の息子アシュラの転生者であることも明かされます。

もちろんナルト本人が長期間努力してきたことには変わりありません。しかし、物語が進むほど出生の特殊性が増えていきます。

  • うずまき一族由来の生命力
  • 九尾を宿せる身体
  • 火影の息子
  • アシュラの転生

そのためナルトは「努力型主人公として始まり、後から血統要素がどんどん追加された主人公」とも言えます。

そしてこれが、ときどき議論になる理由でしょう。

序盤では、落ちこぼれでも努力すれば認めてもらえる物語に見える。ところが後半では「実は父親は火影でした」「実は特殊な一族でした」「実は伝説的人物の転生者でした」となる。

すると読者によっては「結局、生まれが特別だったのでは?」と感じてしまいます。

血統設定を後から追加するときの難しさがよく分かる例です。

一護は血統がそのまま能力説明になっている

『BLEACH』の黒崎一護は、さらに血統との結びつきが強い主人公です。

黒崎一護(BLEACH)

一護は物語が進むにつれて、死神・虚・滅却師など複数の力を持っていることが判明します。そしてその理由が両親の出生と密接につながっています。

つまり一護の場合、「なぜ主人公だけ複数勢力の能力を持っているのか?」という疑問に、「そもそも出生が複数の世界をまたいでいたから」という答えを用意しています。

非常に血統漫画的ですが、物語構造としては合理的です。

『BLEACH』には死神・虚・滅却師という異なる勢力があります。主人公自身にそれらすべての要素を持たせれば、一護の出生を調べることが、そのまま世界設定を掘り下げることになる。

血統を使って主人公と世界観を接続しているわけです。

ゴンは「強者の息子」だが、能力そのものは受け継いでいない

『HUNTER×HUNTER』のゴンも、父親が普通ではありません。

ゴン(HUNTER×HUNTER)

父ジンは世界でもトップクラスのハンターです。物語の最初の目的そのものが「ジンを探す」ことなので、父親の存在は最初から物語の中心にあります。

ただし、ゴンがジンの念能力を受け継いでいるわけではありません。念能力も本人が修行して習得します。

その意味ではルフィに近く、「強者の血を引いているので才能の説得力はあるが、能力の直接継承ではない」タイプでしょう。

この形は、主人公の努力を否定せずに才能の説明を足せます。修行の描写はそのまま活かしたうえで、父親も超一流だったなら、この伸び方にも納得できる、という補足を後から付けられるからです。

虎杖悠仁は「普通の少年」からかなり特殊な出生へ

『呪術廻戦』の虎杖悠仁も面白い例です。

虎杖悠仁(呪術廻戦)

序盤では、身体能力が異常に高い普通の高校生として登場します。

しかし物語が進むにつれて、その出生が羂索や宿儺と深く関係していたことが明かされます。

つまり、なぜ普通の高校生なのにこんなに身体能力が高いのか、なぜ宿儺の器になれたのか、という初期からの違和感そのものが、後半の出生設定につながっている。

これは単なる「実は親が強かった」より、主人公自身が物語上の目的を持って作られた存在だったというタイプです。血統というより「特殊出生」に近いでしょう。

しかし炭治郎は、縁壱の子孫ではない

ここで興味深い反例になるのが『鬼滅の刃』です。

竈門炭治郎(鬼滅の刃)

炭治郎には、次のような要素があります。

  • 日の呼吸を使う
  • 耳飾りを受け継いでいる
  • 縁壱と関係する過去がある

そのため途中までは「実は縁壱の子孫なのでは?」と思わせる構造になっています。

しかし実際には違います。炭治郎の祖先・炭吉は、縁壱の血縁ではありません。縁壱と交流した一般人です。

つまり炭治郎が受け継いだのは、縁壱の遺伝子ではなく、縁壱が残した技術と記憶です。

これはかなり面白い設定です。もし炭治郎が最強剣士・縁壱の直系子孫だったとなれば、非常に典型的な血統主人公になります。

しかしそうしなかった。代わりに、縁壱 → 炭吉が型を見る → 炭焼きの一家が神楽として何百年も伝える → 炭治郎が実戦で使用する、という形になっています。

つまり『鬼滅の刃』は、血統継承ではなく文化継承なのです。

デクは「血」ではなく能力を受け継ぐ

『僕のヒーローアカデミア』のデクは、さらに明確な非血統主人公です。

デク(僕のヒーローアカデミア)

デクは生まれつき無個性でした。父親や母親が世界最強クラスのヒーローというわけでもありません。

そんなデクが、オールマイトに認められてワン・フォー・オールを受け継ぎます。

つまりデクの場合、「特別な家に生まれたから力を得た」のではなく、「行動を評価されて後継者に選ばれた」という構造です。

ただし面白いことに、物語上の役割は血統主人公とかなり似ています。

オールマイトからOFAを受け継ぐことで、デク → オールマイト → 歴代OFA継承者 → AFOとの長い戦い、という歴史に主人公が接続されるからです。

血縁ではありませんが、疑似的な家系図のような継承の系譜が作られています。

少年漫画では「血統」より「継承」が重要なのかもしれない

こうして並べると、人気少年漫画には確かに血統主人公が多いです。

しかし、より大きく見ると、ほとんどの主人公が何かを受け継いでいるという共通点があります。

主人公 受け継ぐもの
ルフィ Dの名、家族の因縁、ロジャーたちの意志につながるもの
ナルト 一族、両親、アシュラから続く因縁
一護 死神・滅却師など複数の血統
ゴン ジンとの親子関係
虎杖 羂索・宿儺につながる出生
炭治郎 日の呼吸とヒノカミ神楽
デク ワン・フォー・オール
ジョジョ ジョースター家そのもの

つまり、血を受け継ぐ作品もあれば、能力を受け継ぐ作品もあり、技術や意志を受け継ぐ作品もある。

少年漫画では「継承」が非常に大きなテーマになっています。

なぜ長期連載ほど主人公の親が大物になりやすいのか

では、なぜ血統設定はここまで多用されるのでしょうか。

一つの理由は、主人公を世界の歴史に簡単につなげられるからだと思います。

物語の最初では、田舎に住んでいた少年、普通の高校生、落ちこぼれの少年、くらいの方が読者は主人公に入り込みやすい。
無名の少年から始めることに具体的にどんな利点があるのかは、なぜ少年漫画の主人公は無名の若者が多いのかで整理しました。

しかし連載が続けば、物語の規模はどんどん大きくなります。世界政府。忍者世界の歴史。千年前から続く戦争。最強能力の起源。

すると、「なぜこの普通の少年が世界規模の物語の中心にいるのか?」という問題が出てきます。

ここで便利なのが血統です。主人公の父親が重要人物だった → 父親の過去を調べる → 世界の秘密に到達する、という流れを作れます。

ルフィならドラゴンやガープ。ナルトならミナト。一護なら一心と真咲。虎杖なら羂索。

主人公自身のルーツを掘るだけで、個人的な物語から世界規模の物語へ自然に移行できます。

血統は「主人公だけ異常に強い理由」にもなる

もう一つのメリットがあります。

バトル漫画の主人公は、当然ながら異常な速度で強くなります。数年前まで一般人だった少年が、世界最強クラスの敵と戦うようになる。普通に考えればかなり不自然です。

そこで、実は特殊な一族だった、実は父親も天才だった、実は特殊な身体を持っていた、と設定すれば、主人公の成長速度に説得力を付けられる。

「努力したから強くなりました」だけでは説明しきれなくなったとき、血統はその不足を埋める材料になります。

しかし血統を強くしすぎると「努力」の価値が下がる

便利な一方で、大きな欠点もあります。

主人公の出生を特別にしすぎると、それまで描いてきた努力の価値が下がって見えることです。

たとえば序盤で、才能がなくても努力すれば強くなれる、というテーマを強く打ち出したとします。

その主人公について後から、実は最強の父親の息子、実は特殊一族、実は伝説の人物の転生、と次々判明すると、読者はこう思ってしまう。

「いや、普通に才能ある側じゃん」

血統設定そのものが悪いのではありません。問題は、作品序盤で提示した主人公像と矛盾するかどうかです。

最初から「父親を探す物語」として始まるゴンなら、ジンが大物でもそれほど違和感はありません。最初からジョースター家の物語である『ジョジョ』なら、血統こそ作品のテーマです。

逆に、「何者でもない少年」を強く押し出してから特別な血筋を大量に追加すると、反発されやすい。

実は「血統なし」でも同じ物語構造は作れる

そして炭治郎やデクを見ると分かるように、主人公を世界の歴史につなげるために、必ずしも血縁は必要ありません。

炭治郎なら技術の継承。デクなら能力と意志の継承。

師弟関係でもいい。失われた文献でもいい。偶然手に入れた道具でもいい。

つまり血統が少年漫画で頻繁に使われる本当の理由は、遺伝子そのものが魅力的だからではないのかもしれません。過去から現在へ何かを継承させる方法として、最も簡単だからなのではないでしょうか。

まとめ:血統持ちは多い。しかし「血統だから人気」ではない

最初の疑問に戻りましょう。

人気の少年漫画は、結局血統持ちが多いのか。答えはかなり多いです。

ルフィ、ナルト、一護、ゴン、虎杖、ジョジョなど、巨大ヒット作には普通ではない家系や出生を持つ主人公が目立ちます。

しかし、人気になるために血統が必要なわけではありません。

炭治郎は最強剣士の子孫ではありません。デクは無個性の少年です。剣心も特別な一族の出身ではありません。

それでも主人公は、過去から何かを受け継いでいます。

つまり少年漫画で本当に重要なのは、「血統」ではなく「継承」なのかもしれません。

主人公が成長するだけなら、その人物一代の物語です。しかし、親から子へ、師匠から弟子へ、過去の英雄から現代へ、仲間から仲間へ、何かが受け継がれると、主人公の戦いに長い歴史が乗ります。

だから少年漫画では、「何者でもなかった少年が、過去から受け継いだものを背負って未来へ進む」という形が繰り返し使われる。

血統は、その「継承」を表現するための最も分かりやすい方法の一つなのでしょう。